リーダーの仮面 著者:安藤広大

【本の簡単な紹介】

 本書は、リーダーの役割を果たすための仮面の必要性と5つのポイントについて学べる一冊です。カリスマ性、人間的魅力がなくてもリーダーとして立ち振る舞うことのできるポイントが分かりやすく紹介されています。

【本と出会ったきっかけ】

 私は、小学校教員です。まだまだ若手ですが、いつか時が来たら中間管理職になるような職業です。また、教師というのは職業の特性上、リーダーとしての立ち振る舞いも必要となってきます。そこで、リーダーとして何を知っていて、どんな考えを持っていることが必要なのかを学びたくて本書を手に取りました。

【こんな人におすすめ】

 リーダーになりたい人、中間管理職の役割を担っている人、リーダーの考え方を知りたい人

 

《ここからは、本書で私なりに大事だなと感じた部分を引用しながら紹介します》

  • リーダーに必要な『5つ』
  1. ルール →  場の空気ではなく、言語化されたルールを作る
  2. 位置 → 対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
  3. 利益 →  人間的魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
  4. 結果 →  プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
  5. 成長 →  目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

        ーリーダーの仮面ー

 リーダーの仕事には、一つの大きなゴールがあります。それは、『部下を成長させ、チームの成果を最大化させること』です。

 そのためには、リーダーとメンバーの間に〝いい緊張感〟がある必要があります。理由としては、なあなあな関係・対等な関係では、部下は成長しないためです。

 部下の成長に必要なのは、リーダーからのポイントを押さえた声かけやルール設定、評価です。

 上述したことを踏まえつつ、リーダーに必要な『5つ』を簡潔に紹介していきます。

⒈ルール →  場の空気ではなく、言語化されたルールを作る

 皆さんは、「ルール」にどんなイメージがあるでしょうか?恐らく、ネガティブなイメージを持っていると思います。なぜなら、「ルール」は行動に対して制限・縛りを作るものであり、不自由な印象だからです。

 ですが、実際の「ルール」の意味は逆です。ルールがあるから、人は安心して生活できますし、自由になれるのです。

 例えば、国には法律があり、道には道路交通法があります。だからこそ、安全にビジネスをしたり、安全に道を歩くことが出来ます。

 「ルール」が無い場所では、どうでしょうか?皆さんは、赤信号で安心して道を渡れるでしょうか?銀行にお金を預けることができるでしょうか?

 赤信号を渡れば、車に轢かれます。銀行にお金を預ければ、そのお金は戻ってきません。

 以上から、「ルール」がいかに必要かが分かります。そして、リーダーとして1つ目にすべき事は「ルール設定」なのです。

 ルールには、『行動のルール』と『姿勢のルール』の二つがあります。

 『行動のルール』とは、「1日に10件以上営業周りをする」「会社に1000万円の利益をもたらす」といった設定した目標に連動したルールのことです。これを守れる場合・守れない場合で部下を評価をします。

 『姿勢のルール』とは、できる・できないが存在しない。つまり、やろうと思えば誰でも守ることができるルールです。「挨拶をしましょう」「会議には遅れず参加しましょう」などが当てはまります。『姿勢のルール』を守らせることで、組織に仲間意識が生まれます。

 

⒉位置 →  対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする

 リーダーは、部下に平等に接することが重要です。そこで覚えていてほしい「平等」と「対等」の違いについて説明します。

 例えば、あなたが、部下に対して仕事を任せたいとします。この時、部下と「対等」な言い方をしてみるとこうなります。

 「時間がある時で構わないので、資料をまとめておいてくれない?」

 「やりたくなかったら断ってくれていいんだけど、この仕事できるかな?」

 このような対等な言い方では、2つの問題が生まれます。

 1つ目は、決定権が部下にあること。

 2つ目は、責任の所在が曖昧なこと。

 特に、2つ目は大きな問題です。というのも、本来であれば、指示に対しての実行責任が部下にあり、実行の結果責任は上司にあるからです。「対等」な言い方は、部下に決めさせる言い方なので、部下に全責任を押し付けることになってしまうのです。これでは、リーダーとしての役割を果たしているとは言えませんね。

 なので、リーダーは〝指示を言い切る〟ということを徹底して行いましょう。

⒊利益 →  人間的魅力ではなく、利益の有無で人を動かす

 人間の行動には、必ずきっかけがあります。「楽しいから動く」「気持ちがいいから動く」「安心するから動く」…などなど。

 さまざまなきっかけがありますが、突き詰めると共通する1つが見えてきます。

 それが『自分にとって利益があるかどうか』です。人は、意識的にも無意識的にも、自分にとって価値があるか、何か得るものがあるのかどうかを基準にして行動を起こします。本来、人間とはそういう生き物です。

 逆に、利益が減ることには、「恐怖」を感じます。利益が減ると思えば、減らないように工夫したり行動したりします。

 利益の大切さは分かりました。では、どのような利益で人を動かすのか?

 答えは、一つです。『成長』という利益で人を動かすのです。

 『成長』こそ、個人も会社も追い求める利益であり、永続的に利益を得続けることが可能です。

 例えば、個人(常に忙しくしている部下)と会社(売り上げを上げたい管理職)がいるとします。個人の求める利益としては、「休む時間がほしい」、会社の求める利益としては「もっと顧客数を増やしたい」となります。

 ここで、個人と会社の利益は、合致していないことが分かります。どちらかの利益を優先するならば、もう一方の利益を見込めません。この状態を〝利益相反〟といいます。

 会社としては、〝利益相反〟する利益を与え続けることは不可能です。では、どうするか?

 『成長』という〝利益相反〟しない利益を与え続けることならできます。そうすることで、個人は成長し、もちろん仕事を終えるスピードも早くなるため、求める利益「休む時間がほしい」ということにも繋がっていく訳です。また、個人が成長することは、会社の成長(売り上げがあがる)ということにも繋がっていきます。

 つまり、人を動かすためには『成長』という利益が最も効果的で最良なものなのです。

⒋結果 →  プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る

 ここで、はじめに抑えておきたい前提があります。

 『褒めてば伸びるは子育て論理』ということ。あくまでも、仕事と勉強は本質的に違うということです。

 例えば、「勉強したって仕方がない」と思っている子供を勉強に向かわせる方法としては、プロセスを褒めることが大事です。というのも、学校の勉強には、明確な報酬や成果がないからです。

 しかし、仕事には給料やボーナスといった目に見えた報酬や成果があります。

 仕事でもプロセスに評価をおくと次のような問題が生まれます。

  • 評価される基準が曖昧になる
  • 残業アピールが増える
  • プロセスの段階による「期待させる報告」が蔓延る 

 これでは、仕事の質も下がりますし、成果を出している人と成果を出していない人の差が生まれないため〝不平等が生じる〟ということです。

 会社のリーダーは、『プロセス評価・管理するのではなく、結果を評価・管理する』ことが重要なのです。

⒌成長 →  目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

 自分の成長方法は知っていると思いますが、部下の成長方法は知っていますか?

 リーダーに求めらめるのは、自身の成長ではなく部下の成長を促すことです。そこで、覚えていてほしいことは、『まずは、一度行動させる』ということ。

 人というのは、知識を増やすだけでは本質的な変化(成長)は生まれません。知識+行動によってのみ、人は変化(成長)するのです。

 たくさんの自己啓発本を読んでいても、実際得た知識・考え方を活用しながら行動しなければ、その知識・考え方の〝本質〟を知ることが出来ないということです。

 そこで、部下には『まず一回やらせてみる』ということを徹底させましょう。しかし、ある部下は、「なぜ私なんですか?」といった説明を求めてくることもあります。最も多いパターンとしては、「まだやったことのない仕事について、やる意味を求められる」ことです。これは、仕事のハードルの高さを恐れている状態です。

 そんな時、リーダーが果たすべき役割は『目の前の恐怖から、未来の成長していない恐怖に目を向けさせること』です。そして次のような声かけで勇気づけましょう。

 「まずは一度、やってみてください。やってみれば、見えてくるものは必ずあります。」

 「あなたが実際にやってみて、もし失敗したとしても、それは上司である私の責任になります。だから思い切ってやってみてください。」

 

 以上が、私が本書で特に大事だなと感じたことです。本書の中には、紹介しきれていないリーダーの仮面を被る必要性や5つのポイントを詳しく説明しています。「部下との関わり方について学びたい」「リーダーに必要なものを知りたい」という方は、是非、一度手に取ってみて下さい。部下を育てるための考え方・関わり方について多く学ぶことができると思います。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。また次回もお楽しみにお待ちください。