「学ぶ力」の鍛え方 著者:相馬亨

【本の簡単な紹介】

 本書は、子どもの学ぶ力、教師の学ぶ力の鍛え方について紹介している一冊です。また、本当に成果のあるものは何かを洗い出し、自分の指導を見つめ直すことの大切さについて学ぶことが出来ます。

【本と出会ったきっかけ】

 私は、小学校教員です。これからの時代は、今よりも多くの新しいものに溢れ、グローバル化が進み、溢れんばかりの情報の中で生きていくことになります。そのことを踏まえた時、誰もが必要になってくるのが『学ぶ力』だと思います。いかに、自分で物事に対して考え、それを言動に起こすことができるか。これが出来なければ、きっと正しいのかもわからない情報に踊らされ、損をすることになります。

 そこで、私が子どもたちに最も身につけさせたい力である『学ぶ力』についての鍛え方を知りたいと思い、本書を手に取りました。

【こんな人におすすめ】

 教育に関わる仕事をしている人、子育てについて学びたい人

 

《ここからは、本書で私なりに大事だなと感じた部分を引用しながら紹介します》

  • 「自分たちが成長すること」を学級を形成する中心軸に据えていて、それが子どもたちの間で共有されていれば、仮にトラブルが表面化したとしても、ボヤ程度で鎮火することができる。

         ー「学ぶ力」の鍛え方ー

 学校生活には、必ずといっていいほど「子ども同士のトラブル」が付きものです。子どもは、まだ自己主張の仕方や対人関係を学ぶ段階の途中なので起こって当然だと思います。

 ですが、この子ども同士のトラブルはなかなかに厄介ですよね。というのも、私も教師として、トラブルを起こした子ども、各々の意見を聴き取り、その上で、話し合いや解決に向かわせたい。しかし、なかなか上手くいかない。というのを経験してきたからです。

 では、どうすれば「子ども同士のトラブル」を解決できるでしょうか?

 絶対的な方法ではありませんが、とても効果的な方法があります。

 それは、『自分たちが成長すること』を子ども達の中に常に意識させることです。2つのイメージを使って説明していきますね。

 ①クラスメイトと仲良くすることは、大事なことである。

 このイメージには、【目的】と【理由】が含まれています。

 【目的】クラスメイトと仲良くすること。

 【理由】大事にすべきことだから。

 この【理由】は、いわば道徳的規範なので、【目的】である「仲良くできた」「仲良く出来なかった」ということは、善悪や正誤といった価値判断に置き換わります。

 つまり、「クラスメイトと仲良く出来なかった」は「悪いこと」、「間違っていること」となってしまう訳です。

 では、二つ目のイメージはどうでしょう。

 ②クラスメイトと仲良くすることは、自分自身の成長につながる。

 このイメージには【目的】と【手段】が含まれています。

 【目的】自分を成長させること

 【手段】クラスメイトと仲良くすることによって。

 このイメージでは、「クラスメイトと仲良くする」が【目的】から【手段】となり、「大事にすべきだから」という【理由】がなくなります(価値判断を必要としなくなる)。そして、「自分を成長させること」が【目的】となります。

 ①と②の違いは、①の【目的】は他律的になりやすいのに対し、②の【目的】は自律的になりやすいということです。

 ①の価値観のもとで、クラスメイトと仲良く出来ない状況が続いたとしたら、子どもの思考はどうなるのでしょうか?おそらく次のような段階を踏んでいくと推測します。

 〝先生や親にバレたら怒られる〟

       ↓

 〝そんなのイヤだ〟

       ↓

 〝じゃあ、黙っていよう〟

       ↓

 〝それに、○○さんだって悪い(自分だけが悪い訳じゃない)〟

       ↓

 〝むしろ、グズグズしていた○○さんの方が悪い〟

 子どもたちは、このような思考の段階を踏み、自らを正当化していきます。そのため、いくら教師や大人が説論しても、子どもは内心では納得しない(そうしたいと思っても、出来なくなっている)のです。

 これは、反抗心ではなく、自己防衛意識です。この「悪い」「間違っている」といった道徳的な価値判断が子どもの言動を縛ってしまっているのです。

 では、②だとどうでしょうか?

 〝このままでは自分は成長出来ない〟

       ↓

 〝でも、○○さんとは仲良く出来ないかもしれない〟

       ↓

 〝どうすればいい?〟

       ↓

 〝だれか(たとえば、先生や親)に相談してみる?〟

 ②のイメージをしっかりと子どもが持つことが出来ている状態ならば、悪い状況になっていても萎縮することなく、課題解決への意欲につながる可能性が期待できるのです。というのも、何らかの意思決定を行う際に、善悪や正誤の価値判断をする必要がないためです。つまり、子どもの言動を縛る道徳的価値判断を関与させていないため、子どもは自ら課題解決に向かう可能性が高くなるのです。

 自律的な考えで、子ども同士のトラブルを解決できれば、根本的な問題解決ができ、何より『成長』繋げる大きな成果となることでしょう。また、「自分を律する考え方」が身につき、学ぶ力に必要な「自己判断力」の向上にも繋がっていきます。

  • 目標設定シートの活用で子ども達の〝自分を信じる力〟を鍛える

   ー「学ぶ力」の鍛え方ー

 『目標(ゴール)』は、人が成長する、前に進むために必要なものです。というのも、『目標(ゴール)』があることで、自分がどこに進んでいけばいいかの迷いや不安が無くなり、目標に近づくことで〝自信〟が身についてくからです。そして、〝自信〟は前に進む力の手助けをしてくれます。『目標(ゴール)』は、何をするにしても大切なのです。

 では、『目標(ゴール)』をどのように設定するか?

 本書では、目標設定シートを活用していて、「いつまでに何を目指したいのか」「そのために日々何をするのか」を子ども達に書かせる方法が紹介されていました。

 ここでは、私が目標設定シートを活用してみた例を載せておきますね。

 原本ではないので正確ではないですが、イメージはこんな感じです笑

 参考になれば、幸いです。

  • 80対20の法則(パレードの法則)

   ー「学ぶ力」の鍛え方ー

 80対20の法則(パレードの法則)とは、「全体の仕事の中で成果を上げている80%は、全体の原因のうちわずか20%によって生み出される」という法則です。

 この法則を意識することで次のメリットを得ることが出来ます。

  • 成果の高い仕事・方法がわかる
  • 時間的な余裕が生まれる(成果の薄い仕事をしないため)
  • 仕事の質が高くなる    

 この法則によるメリットを得るためには、〝C(チェック)〟がとても重要です。今一度、自分の仕事・方法を書き出し、〝C(チェック)〟を行い、成果の高い仕事・方法を把握してみてください。そして、その仕事・方法に力を注ぐようにしてみましょう。それだけで、仕事の効率が高くなりますよ。

 

 以上が、私が本書で特に大事だなと感じたことです。本書の中には、ここでは紹介しきれていない「学ぶ力」の鍛え方や、自己成長につながる考え方・方法が具体的かつ詳しく紹介されています。教育に関わる方や子育てに興味のある方は、是非一度手に取ってみてほしいです。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。また次回もお楽しみにお待ちください。